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【2012年01月~2013年12月】日本語教育、ビザ等

出生届に係る法務省の通知:「婚外子」記入なしでも受理可能
(参考資料:2013年12月21日、朝日新聞)

 最高裁2013年9月4日大法廷決定を受けて、婚外子に係る相続差別規定を削除した、改正民法が今月、ようやく成立しました。しかし、出生届に婚内子か婚外子かを記すよう義務付けた戸籍法の規定(以下、「本件規定」と言います。)は、依然として残ったままです。そこで、出生届の届出人がこれに婚外子と記載しなくても、これが市町村の窓口で受理される方法があることを、この場で改めてお知らせ致します。
 出生届には、□嫡出子、□嫡出でない子、どちらかに✓印をつけて選ばせる欄(「父母との続き柄」)があります。この欄については、どちらにも✓印を入れないで下さい。一方、この欄の右側にある、(□男、□女)については、どちらかに✓印を入れて下さい。そして、出生届の下部にある「その他」欄に、「子は母の氏を称する。」、又は、「子は母の戸籍に入籍する。」と記入して下さい。
 この方法は、法務省が2010年、一定の条件を満たした場合は、婚外子かどうかの記載が無くても出生届を受理するよう、市町村に通知したものに従っています。当該通知には、まず、市町村の職員が届出人に、出生届に婚外子かどうかを「記載するよう補正(修正・加筆)を求める」とした上で、届出人がこれに「応じない場合は……」という記述があります。つまり、市町村の職員は、届出人にいったん、婚外子かどうかの記載を求めて、届出人がそれを拒んだら、それを記載しなくてもよい方法を伝える、という手順を踏むことになります。
 法務省は、婚外子の相続差別を撤廃する民法改正に合わせて、本件規定の削除も検討していましたが、自民党内の強い反対意見を受け、断念したという経緯があります。そこで、法務省民事1課は、「届出人が記載したくないという意思を示した場合は、柔軟な対応をするよう自治体への周知に努めたい」としています。
 こうした中、早稲田大学の棚村政行教授(家族法)は、本件規定について、「差別を温存するもの。民法の相続差別規定が撤廃された今、必要のないものだ。そのことは、法務省の通知からも明らかだ。同省は、記載しないで済む方法を当事者に積極的に知らせるよう、自治体に徹底すべきだ。また、国会は、子どもの人権を守る観点から、直ちに規定を削除すべきだ。」と述べています。差別につながる本件規定は、1日でも早く、削除されるべきものであると思われます。

最高裁大法廷:非嫡出子(婚外子)相続差別規定に「違憲」判断
(参考資料:2013年09月02日及び同月05日の朝日新聞、最高裁2013年09月04日大法廷決定)

 最高裁大法廷は9月4日、結婚していない男女間に生まれた子(非嫡出子、婚外子)の遺産相続分を、結婚した男女間の子(嫡出子、婚内子)の2分の1とする、民法900条4号ただし書き前段(以下、「本件規定」と言います。)について、「法の下の平等」を定める憲法14条1項に違反するという判断を、担当裁判官14人全員一致により下しました。
 少し具体的に述べると、最高裁大法廷は決定の中で、「昭和22年民法改正時から現在に至るまでの間の社会の動向、我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化、諸外国の立法のすう勢及び我が国が批准した条約の内容とこれに基づき設置された委員会からの指摘、嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等の変化、更にはこれまでの当審判例における度重なる問題の指摘等を総合的に考察すれば、家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかである」ことや、「父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきている」ことを指摘した上で、「遅くともAの相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていた」として、「本件規定は、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していた」という判断を示しました。
 また、先例としての事実上の拘束性について、「本決定の違憲判断は、Aの相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき、本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない」と説示しました。最高裁がこのように、決定が及ぶ範囲について、法律に近い拘束力を持つ判断を示すことは異例です。
 この点について、千葉勝美裁判官は補足意見の中で、「法令を違憲無効とすることは通常はそれを前提に築き上げられてきた多くの法律関係等を覆滅させる危険を生じさせるため、そのような法的安定性を大きく阻害する事態を避けるための措置であ」って、「違憲判断の遡及効の有無、時期、範囲等を一定程度制限するという権能、すなわち、立法が改正法の附則でその施行時期等を定めるのに類した作用も、違憲審査権の制度の一部として当初から予定されているはずであり、本件遡及効の判示は、最高裁判所の違憲審査権の行使に性質上内在する、あるいはこれに付随する権能ないし制度を支える原理、作用の一部であって、憲法は、これを違憲審査権行使の司法作用としてあらかじめ承認している」と説明しています。
 最高裁がこのような苦渋の判断をせざるを得ない理由は、この問題を立法によって解決しなかった国会の無作為にあると言えます。最高裁大法廷が1995年、本件規定を「合憲」とする決定を出しましたが、その翌年には法制審議会が非嫡出子(婚外子)も同様に扱う民法改正案要綱を答申していました。しかし、当時の与党・自民党内では、「法律婚の保護が必要である」、「不倫を助長する」などといった反対意見が相次いだため、法務省は結局法案を提出できませんでした。それ以降も、法案の提出の動きが出るたびに、保守的な政治家から大きな反発があり、何の改正もないまま現在に至っています。
 もし、1996年に立法による解決(本件規定の改正)が行われていたならば、被相続人の死亡・相続人間の話し合い(調停も含みます。)・裁判などの時期の違いによって、非嫡出子(婚外子)が救済されるか否かが分かれてしまうという、当事者にすれば納得し難い状況は生じなかったでしょう。今回の最高裁大法廷の「違憲」判断のみで、本件規定が自ずと変更されるわけではないので、国会議員は、裁判官全員一致による決定を厳粛に受け止め、直ちに法改正に着手すべきです。

 ⇒最高裁2013年9月4日大法廷決定

最高裁が非嫡出子の相続差別「合憲」判例を再検討 審理を大法廷に回付
(参考資料:2013年02月28日、読売新聞、日本経済新聞、朝日新聞など)

 結婚していない男女間の子(非嫡出子)の相続分を、法律上の夫婦の子(嫡出子)の2分の1とする民法900条4号ただし書前段(以下、「本件規定」と言います。)について、「法の下の平等」を定めた憲法14条1項に違反するか否かかが争われた2件の遺産分割裁判の特別抗告審で、最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は2月27日、その審理を最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)に回付しました。最高裁大法廷は1995年7月5日に本件規定を「合憲」と判断しましたが、今回は大法廷に回付されたことにより、その判断が見直される可能性があり、年内にも大法廷の結論が示されるものとみられています。
 大法廷は最高裁の裁判官15人全員で構成され、新たな憲法判断や違憲判断、過去の最高裁判例の変更が必要な場合などに開かれます。その内、寺田逸郎裁判官(裁判官出身)は法務省での公務経験があるため今回の審理には関与せず、実際には14人の裁判官により審理されることになります。
 最高裁1995年7月5日大法廷決定(民集49巻7号1789頁)は、本件規定の立法理由が法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものであり、合理的であるとし「合憲」としましたが、その内5名の裁判官は、本件規定が個人の尊重及び平等原則に反する上に、今日の社会状況に適合しないなどと説示し、「違憲」とする反対意見を述べました。
 この大法廷の決定後、最高裁は同種の事案5件(①2000年1月7日第一小法廷判決、②2003年3月28日第二小法廷判決、③2003年3月31日第一小法廷判決、④2004年10月14日第一小法廷判決、⑤2009年9月30日第二小法廷決定)についても審理しましたが、いずれも「合憲」判断を維持してきたものの、「違憲」と指摘する反対意見を付してきました。直近の⑤(裁判集民231号753頁)については、多数意見の竹内行夫裁判官(行政官出身)が、少なくとも2009年時点では、「本件規定は、違憲の疑いが極めて強いものである」と指摘しました。また、直近の同種の事案の高裁判断には、大阪高裁2011年8月24日決定法令違憲、確定)、名古屋高裁2011年12月21日判決適用違憲、確定)があります。
 今回最高裁に特別抗告を行った2件の事案は、一つが2001年7月に死亡した東京都内の男性、もう一つが2001年11月に死亡した和歌山県内の男性の遺産をめぐるものです。前者は東京高裁で、後者は大阪高裁で、いずれも2012年、本件規定を「合憲」とする判断が示され、非嫡出子側の主張が認められませんでした。なお、2010年にも、今回と同種の事案の裁判が大法廷に回付され、「合憲」の判断が見直される可能性があるのではと予想されていましたが、当事者間(裁判外)で和解が成立したため、再び第三小法廷に戻され、2011年3月9日、同法廷により却下されました。
 最高裁大法廷は今回、18年前に示した「合憲」の判断を見直すか否かを検討するに当たり、婚姻・家族生活・親子関係の実態、国民の意識、日本を取り巻く国際環境などの変化に着目するものと思われます。厚生労働省の人口動態調査によると、1995年に生まれた非嫡出子は14,718人(出生総数の1.2%)でしたが、2011年のそれは23,354人(同2.2%)となり、事実婚やシングルマザーが増加傾向にあることにより、出生総数に占める非嫡出子の割合は増加しつつあります。
 また、国民の意識にも近年大幅な変化が生じてきています。内閣府が2012年12月に行った世論調査によると、本件規定について、「変えない方が良い」とする人の割合は35.6%であり、「相続できる金額を同じにすべき」とする人の割合は25.8%でした。しかし、「変えない方が良い」とする人の割合は、1994年に行われた世論調査の49.4%に比べると、10%以上も減少したことになります。
 さらに、日本を取り巻く国際環境にも変化が生じてきました。例えば、2001年にフランスで姦生子の相続分を嫡出子の2分の1とする旨の規定が撤廃されたことなど、諸外国においては本件規定のような差別条項の撤廃が進んできました。日本も国際人権規約児童の権利条約を批准していますが、これらの条約では「出生による差別」が禁止されており、それゆえに日本は国連から1993年以降、少なくとも4回、本件規定の是正を勧告されています。現在、主要先進国の中で非嫡出子に対する差別を残しているのは日本だけとなりました。
 最高裁大法廷が本件規定について、「合憲」の判断を見直した場合、過去の遺産分割や相続財産の取引にも混乱が生じかねないとの理由から、過去に相続差別の解消の効果が遡及しないよう、立法によって解決すべきであるという見解があります。民法典全体の問題として考えると、確かにその通りです。しかし、過去にも法務省が法案化を目指しましたが、保守的な国会議員らの強い反対により、現在でも立法化に至っておりません。このままでは、少数派である非嫡出子が立法により救済される見込みはほとんどありません。だからこそ、彼らは裁判所に救済を求めているのです。その点については、上述した最高裁判例の反対意見や高裁判例などの中でも指摘されています。
 私の周辺は国籍を問わず非嫡出子の方々が比較的多いので、今回の最高裁大法廷の判断の行方に注目しています。

 関連項目:非嫡出子(婚外子)の相続差別「違憲」(大阪高裁決定)

外国人児童への日本語教育(横浜市立いちょう小学校)
(参考資料:2013年01月18日、日本経済新聞夕刊)

 文部科学省の調査によると、日本語指導が必要な外国人児童生徒数は、2010年度に全国で28,511人となっており、この10年間で54.7%増加したことになります。日常会話に大きな支障はないものの、教科学習支援が必要な児童不就学児童も含めると、日本語指導が必要な外国人児童生徒数はそれ以上の数に上ると言われています。
 このような事実から、外国人児童のための日本語指導が学校教育現場において重要課題となっていますが、外国籍又は外国にルーツを持つ児童生徒数の割合が72.5%もある横浜市立いちょう小学校(同市泉区)では、日本語の習熟度に応じた少人数制の授業を実践しています。同校は、「言葉の壁」を低くすることを目指し、日本語による授業を理解できずに取り残されてしまう外国人児童を出さないよう、「みんなと一緒に学ぶためのステップ」と位置付け、一人ひとりに合わせた日本語指導に取り組んでいます。
 同校に隣接する団地には、同校の近くに難民の定住を支援する研修施設があったことなどから、現在でもベトナムや中国などの外国人世帯が数多く入居しています。また、全校生徒数が171人の同校には、外国籍児童が97人、親などが外国にルーツを持つ日本国籍児童が27人在籍しています。
 同校に通う外国人児童の家庭では、母語を使って会話する者も多く、日本語の習熟度はまちまちですが、同校はこうした状況に対応するため、2010年度から国語と算数について少人数制の授業を導入しています。田中秀仁校長は、「それまでは、理解していない子が2割ほどいても、授業を進めざるをえないことがありました。少人数なら児童一人ひとりの理解度に応じて丁寧に教えられます。」と述べています。
 具体的には、同校は国語について、1、2年生を4クラス、他の学年を3クラスずつに分けています。例えば、昨年秋に来日したばかりの中国人の2年生男児については、まず教師とのマンツーマンにより日本語の初歩レベルを指導し、本年1月から少人数制の授業にも参加させているようです。当該児童は、授業中には日本語と中国語を使って発言し、休み時間には他の児童と仲良く遊んでいるとのことです。
 なお、児童数の減少のため、同校は2014年度から近隣の飯田北小学校と統合される予定です。少人数制のクラスが統合後も継続できるかは未定です。しかし、いちょう小学校教務主任の菊池聡教諭は、「日本語に課題がある子どもも、安心して他の子どもたちと一緒に学べる環境をつくりたいです。」と述べています。
 文部科学省は、「教育の平等の観点から、外国人の子どももきちんと学べる体制を築く必要がある。」(国際教育課)とし、省令を改正し、現状は地方自治体任せになっている日本語指導を2014年度から正規の授業とする方針を打ち出しました。これを受け2013年度の概算要求では、国が人件費の一部を負担する日本語指導の加配教員を、2012年度に比べて100人多い1,485人にすることを盛り込みました。また、同省は、日本語能力測定テストも作成中で、2013年度に全国の教育委員会に配布する予定です。ただし、日本語能力の測定法については、批判的に検証していく必要があるかもしれません。

 関連項目:外国人児童の教育を受ける権利 児童の権利条約と退去強制

国籍留保規定(海外で出生:3ヶ月以内に届出必要)に合憲判決(東京地裁)
(参考資料:2012年03月24日、朝日新聞及び日本経済新聞)

 国籍法第12条には、「出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失う。」と規定されています。そして、戸籍法第49条には、「出生の届出は、14日以内(国外で出生があったときは、3ヶ月以内)にこれをしなければならない」と規定されています。出生によって日本国籍と外国籍を取得する重国籍の子が外国で生まれた場合、生まれてから「3ヶ月以内に」日本国籍を留保した出生の届出を行わないと、子は出生の時にさかのぼって日本の国籍を失ってしまいます。
 これらの規定が憲法14条(法の下の平等を定めたもの)に違反するか否かについて争われた訴訟の判決が、03月23日、東京地裁(定塚誠裁判長)でありました。東京地裁は、「合憲」との判断を示しました。法務省によると、1985年に施行されたこれらの規定を合憲とした司法判断は初めてです。定塚裁判長は判決理由の中で、「国籍法の規定は二重国籍の発生をできるだけ防ぎ、日本とつながりの薄い人が形骸的な日本国籍を取得するのを防止するもので、立法目的は合理的」であると指摘しました。
 当該訴訟の原告は、日本人の父とフィリピン人の母を持ち、1986年~2007年にフィリピンで生まれ、フィリピン国籍を持つ27人でした。これらの方々は、親が国籍法第12条及び戸籍法第49条の規定を知らなかったなどの理由により、出生後3ヶ月以内に出生の届出(日本国籍の留保)が行われず、日本国籍を喪失しましたが、「日本で生まれればそのまま国籍を持てるのに、海外で生まれたばかりに国籍を失うのは不当な差別だ」などと主張していました。法務局の職員の誤りで出生の届出(日本国籍の留保)が行われなかった1人については、日本国籍が認められましたが、残る26人の請求については、上記の「合憲」判断により棄却されました。原告側は控訴する方針のようです。

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